熱くて切ない、ハードボイルド・エンターテイメント小説。

確か、福井春敏さんの処女作だと思うけど、「亡国のイージス」の前作っていうか、後のテーマを凝縮したような、国家とか自衛隊とか、安全保障とかを、表向き扱っている話なんだけど、泣けるのはやっぱり、それまで全く関係ない世界で生きてきたような若者とオジサンの心の触れあいみたいな部分。

初期の作品だけあって、まだ熟れていないかな？と思う側面もあって、保クン、かっこよすぎ。ちょっとハリウッド的。

キャラクターが、コミック的ってことは、少々リアリティに欠けているってことなのかな。ネルフのゲンドウと綾波かリツコさんか、っていう感じの佐久間と涼子。ゴルゴ13みたいなヤクザの金谷。

主役の元マル暴警官の警備員、桃山サンときたら、ちびまる子の父ちゃんのひろしか、あぁ、ひろしといえば、クレヨンしんちゃんのひろしもいるけど、それらのひろしに、こち亀の両さんも足して割ったみたいな、ぐうたらで熱いやつ。

でもいいよ、「必涙の〜」っていう宣伝文句に嘘はないし、オウム真理教の地下鉄サリン事件をモデルにしたプロットは、「もしかして…」とゾッと振り返って思い返す説得力もある。他にも、ウィルス戦や戦闘ヘリと護衛艦との闘いなど、見どころ満載！

タイトルの「川の深さは」というのは、その人の情熱度を調べる心理テストから来たもの。この人の話には、よく、川と海が出てくるけれど、日本には川が多いせいか、日本人一般に川は、いろいろなメタファーとして使われるよね。物語全体を浸すように流れる、このタイトルとともに、今回は文庫の装丁もとても気にいって何度も眺めてしまった。